学際企画主催「第2期 タイポドント模型で習得するストレートワイヤーエッジワイズ法 2Days 矯正実習」に参加しました
皆さんこんにちは。いいじま歯科クリニック勤務医の劉です。
2025年5月14日より二日間、東京・田町にて開催された矯正歯科のセミナーに参加しました。講師は日本矯正歯科学会認定指導医の竜立雄先生でした。今回もこのブログを通じて、セミナーで学んだ矯正歯科の知識および手技についてご紹介いたします。
矯正歯科と聞くと、おそらく「太い針金を様々な形に曲げて歯並びを整える」という技術を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、これは矯正治療の一部に過ぎません。今回のセミナーで使用された技術は、針金を曲げるスタンダードエッジワイズ法ではなく、あらかじめ規格化された材料を用いて歯並びを整える方法です。すなわち、「針金を曲げない」技術(ストレートワイヤーエッジワイズ法)です。
上図の説明の通り、どちらも矯正歯科の技術ですが、使用する器具には大きな違いがあります。
左側の伝統的な矯正法(スタンダードエッジワイズ法)に使用されるブラケットは、歯に接着する部分(ベース)が平坦で、スロット(針金を通す溝)もまっすぐになっているのが特徴です。
一方、右側にあるストレートワイヤーエッジワイズ法では、ブラケットの位置の調整に加えて、角度のついたスロットが使用されており、診療時間の短縮につながる仕組みになっています。
今回のセミナーでは、このストレートワイヤーエッジワイズ法をさらに改良した MBTシステム について学びました。
- MBTシステムとは
MBTシステムは、McLaughlin(マクラフリン)、Bennett(ベネット)、Trevisi(トレビジ)の3人の矯正歯科医によって開発された、ブラケット装置と治療手順に関する総合的な矯正システムです。
- MBTシステムの特徴
- あらかじめ歯の最終的な位置を想定し、ブラケットに角度やトルクが組み込まれています。
- 従来の矯正法に比べて、より正確で効率的な歯の移動が可能です。
- 歯の角度に合わせてブラケットが作られており、矯正の仕上がりが向上します。
- 標準化された治療プロトコルにより、一貫した結果を得やすく、治療の再現性が高いです。
- 比較的軽い力で持続的に歯を移動させるため、患者の負担を軽減しつつ、効率的に歯を動かします。
要するに、MBTシステムは伝統的な矯正治療に比べて規格化されており、術者の技術差による治療結果のばらつきを少なくすることを目指しています。
- MBTシステムの手技
手技自体は、伝統的な矯正と大きく異なるわけではありませんが、基本的には「決められた器具を、決められた手順で、決められた位置に使用する」ことが原則です。
以下の流れは基本的に同様です。
- ブラケットの位置決定
- ブラケットを歯面に接着 (抜歯症例ではこの段階の後に抜歯)
- ワイヤーをブラケットに固定(結紮線またはモジュール)
- 歯を移動させて、完成
また、「規格化」が求められるため、使用する器具にも明確なルールがあります。
たとえば、歯並びには様々な形態があるため、最終的な形を予測し、それに合ったワイヤー(オーボイド、スクエア、テーパードの3種類)を選び、結紮固定していく必要があります。
では、実習の写真をお見せします。
↑ 右半分を使って、まず歯の近遠心的な中央点(歯冠と歯頚部)を結んだ線を描いて(縦線、=FACC)、その線を測った長さを半分にしてFA点にします。全部の歯を計測し、マーキングした後、ブラケットポジショニングチャートに合わせて、一番多く丸を書いた一行を基準にし、その一行に書いてある数字を今回矯正するためのブラケットの位置にします。
もちろん、実際に患者さんの口の中にマーキングできないので、左半分はポジショニングゲージのみの練習でした。
その後、ブラケットを貼り付け、4番抜歯し、最初のレベリングに入ります。(.016 HANT)
↑このように、4番抜歯した後7-3にレースバックとワイヤーの力を使って、レベリングと同時に遠心にも移動させる。
↑レベリングは大体終わって、ワイヤーを変えて、本格的に前歯部の遠心移動を始めていきます。
ここで左下7番遠心を注目すると、余分のワイヤーが多いと思われますが、これはスライディングメカニクスの特徴の一つです。治療に合わせて歯が移動し、スロットの中に固定されたワイヤーも規制な器具によって、全体的に遠心の方に移動します。そのため、毎回来院時に必ず余分のワイヤーが長すぎるかどうかを確認する必要があります。
↑ 犬歯の遠心移動も特に問題なく成功し、最終的なワイヤーにし、残りの4前歯を動かしたら完成です。
↑ 最終的にはこのような形になります。4前歯はアクティブタイバックを用いて遠心移動しました。全体的にバランスよく緊密な歯列になりました。
最後に
今回のセミナーを通じて、MBTシステムのような優れた矯正法について学ぶことができました。最終的な歯列の形を予測し計画した上で、既製の器具を用いて歯を動かす矯正治療です。より弱い力で効果が得られ、術者による差が少ない信頼性の高い治療であるため、今後はこうした方法についてさらに学び、より専門的な知識と治療の選択肢を提供できるよう精進してまいります。
これからもよろしくお願いします!