ソムノメッド主催「ソムノデントMAS クリニカルセミナー」受講報告
みなさんこんにちは。
いいじま歯科クリニック勤務医の劉です。
今回は、睡眠歯科治療用マウスピースで国内外において広く知られているソムノメッド社主催の認定セミナーに参加してまいりました。
講師は、順天堂医院 睡眠・呼吸障害センター長の葛西隆敏先生と、古畑いびき睡眠呼吸障害研究所所長の古畑升先生のお二方。いずれも長年にわたり睡眠医学の第一線で活躍されている、まさにこの分野のパイオニアです。
今回のセミナーは、医科部門と歯科部門をあえて分けた構成で行われ、基礎知識・臨床知識・実際の操作までしっかり網羅された内容でした。
このような非常に実践的なセミナーで得られた知識と経験を、ここで少しご報告させていただきます。
午前の部:睡眠医学の重要性とその全身への影響
午前中は、葛西先生より睡眠医学の重要性と必要性についての講義がありました。
3月の宮地先生の受講報告とも内容が重なる部分もありますが、今回は研究データや論文に基づく解説が充実しており、より深い理解を得ることができました。
無呼吸による生理学的変化や、現在使われている各種治療法(減量・手術・OA・体位療法など)の効果比較、さらにはHNS療法や薬物療法といった新しい治療法の紹介まで、非常に充実した内容でした。
また、治療によって改善が期待できるのはQOLだけでなく、生命予後そのものが正常人とほぼ同等に近づくという報告もあり、あらためて睡眠障害が多方面の疾患に与える影響を実感しました。
特に心血管系疾患における国内外の研究報告は印象的で、「やはり睡眠と呼吸は本当に大事だな」と再認識した次第です。
午後の部:OA治療と医科連携、実技(咬合採得)
午後は、OSA(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)に対するOA治療の意義や医科連携の方法、OA装着後の注意点、そして咬合採得の実習が行われました。
OSA治療には主にCPAPとOAの2つの柱があります。CPAPは効果が高く完成度も高い治療法として知られていますが、装着中の脱落や不快感、保険適応のハードルなど、現実的な課題も少なくありません。
その点、OAは適応の幅が広く、使いやすい選択肢として重要な役割を果たしています。
ただし、OAも万能ではなく、咬合・歯列・TMD・ブラキシズムなど、患者さんごとに異なる要因への配慮が必要です。また、使用後のストレッチやリハビリの重要性についても言及がありました。
↑ ソムモーニング・リポジショナー:OAを一晩中使用した後、朝食の前に使用するマウスピースです。これを使って下顎をもとの位置に戻します。
実習:ソムゲージによる咬合採得
実習では、ソムノメッド社独自の「ソムゲージ」を使用して咬合採得を行いました。
基本的にはジョージゲージに似た構造ですが、患者ごとの状態に応じた柔軟な調整が必要で、構成咬合位の採得よりも術者の判断が問われます。
特に、動揺歯・インプラント・歯列不正・彎曲・TMDなどがあるケースでは、細かい配慮と注意深い操作が求められました。
↑ 従来のOAと違って、ソムノメッド社のOA「ソムノデント」は上下分離式です。このように、装置を入れた後の開口運動はもちろん、左右の偏心運動もできます。このように通常の顎運動に近いようなタイトレーションを用いて、より関節や口腔内環境の負担を少なくできます。
おわりに
今回のセミナーを通じて、睡眠医療の最前線で活躍されている先生方のお話を直接伺う機会に恵まれ、大変光栄でした。
睡眠医療は現時点では医科中心の分野ですが、OA装置を通じて歯科として関われる余地は確実に広がっています。
医科―歯科の連携強化、装置のさらなる改良、保険制度との調整など、まだ多くの課題はありますが、
今後も患者さんのためにできることを模索しながら、より良い医療の提供に貢献できるよう、精進してまいります。