「根の治療の成功のポイント」
前回、『治療は途中で中断することなく、継続することが成功のポイントです。』
とお伝えしましたが、成功率にはどのようなものが関わっているかを今回はお伝えします。
- 術前の歯の状態に大きく影響される。
スウェーデンで行なわれた研究では、無菌的治療法を行なえば、根の先に病変のある2回目以降、根の治療以外の根管治療の成功率はかなり高い
→途中で中断することなく、継続し、被せ物まで入れることが大切です。
- 根管の形はさまざま
根管は単純な形態ではなく、分岐したり、枝分かれすることがある。
→複雑な形だと根の治療が長引くこともあります。
- 見えないから大変!!
根管の中は直接見ることができない閉鎖された場所なので、治療にはメーターやレントゲン写真、手に伝わる感覚が利用されている。
→歯医者さんは何をされているかわからないと感じた時はぜひ質問してみてください。
いくらきれいな被せ物を作っても・・・
根の治療が悪いとすべてが台無しになる。
→そのため、丁寧に根の消毒を行い、歯の根の病気を治療、予防して
います。
松村英雄教授講演
10月14日。日本歯科大学新潟生命歯学部アイビーホールにて、私の所属していた補綴学第二講座の同門会が開催されました。
今年の同門会講演会は日本大学歯学部 歯科補綴学第三講座 松村英雄教授をお迎えして開かれました。
松村教授はこの夏まで日本補綴歯科学会理事長を務めあげらてた、補綴学の分野での重鎮であります。過去、何度も同門会から講演をお願いしていたのですが、大変お忙しい方でなかなかその機会に恵まれず、残念に思っていたのですが、今年やっと念願叶いました。
今回のテーマは「良質な補綴歯科治療の提供を目指した医療機器と技術の保険導入」でした。
もともと、先生は日本大学歯学部卒業後、東北大学工学部、東京医科歯科大学大学院にて歯科理工学の研究を行い、我が国の接着セメント関連の研究者・臨床医の第一人者です。
歯科材料学の面で、我が国の研究開発・実用化は、残念ながら欧米の後塵を配している感があるのですが、その中で接着の分野は世界の最先端を走ってきていまして、その功労者のお一人が松村先生です。
先生は長崎大学講師、助教授を経てその後に日本大学教授に就任されました。
私は大学の研究室でセラミック材料の研究を10年ほどしていたのですが、セラミック修復の臨床応用には、その接着材の併用が必須だったのです。そんな経緯もあり、ちょうど長崎大学で活躍なされていた時に、先生には間接的・直接的にいろいろとお世話になりました。もう、20年も前になりますでしょうか。
ですので,今回の講演で先生とお会いできることを本当に楽しみにしておりました。
20年以上も前の私の研究や論文もしっかりと覚えていらしていただいたことに、すっかり感激してしまい、懇親会の席では歯科医療について長時間楽しく語り合うことが出来ました。松村先生のおかげでとても有意義な時間となりました。
今回の講演では、普段私たち臨床医が触れる機会のない、歯科材料,器械,技術等の保険導入されるまでのステップについて分かりやすく解説いただきました。
「歯科材料や技術の承認あるいは認証」から保険診療用器材として認められるまでの段階についてお聞きできました。
厚労省に提出された材料技術は中医協で保険導入可否の審査を受けることになります。判定の基準は受診者の健康の保持,増進への寄与であり,歯科医師と業界にとっては,器材,技術の保険導入には種々の対応が必要とのことです。
また、今回は臨床での接着を成功に導くための勘所やポイントを聞かせていただき、日常診療へのヒントが満載でした。
例えば、被着面である歯面の仮着材の除去に配慮が必要なこと、支台ポスト部の水分が接着力低下の原因になり得るので、マルチサクションやペーパーポイントで水分を取る事が重要。など、様々なお話を伺えました。
早速、日々の診療に取り入れたいことばかりでした。
このような貴重な機会をいただいた松村先生に心から感謝申し上げます。
松村英雄教授御略歴
1981年 日本大学歯学部卒業
2003年 日本大学教授(歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座:-現在)
2015年 日本大学歯学部附属歯科技工専門学校長(兼務:-現在)
2013年 日本歯科医学会副会長(-現在)
2015年 公益社団法人日本補綴歯科学会理事長(-2017年6月)
2016年 一般社団法人日本歯科医学会連合副理事長(-現在)